呼吸器グループ
岡山大学病院では、周囲の臓器やリンパ節にがんのひろがり(浸潤・転移)をもつ局所進行肺がんの患者さまに対して、手術療法と、化学療法(抗がん剤)および放射線療法を組み合わせた、集学的治療を行っています。特に、腫瘍内科・放射線科と協力して開発した術前導入化学放射線療法(化学療法・放射線療法を行った後に手術を行う治療法)では、術後合併症を最小限に抑えながら、5年生存率が60%を超える世界に類を見ない素晴らしい成績を上げています。
また、気管・気管支や肺動脈をはじめとする重要臓器に肺がんが及んでいる場合には、これらの合併切除が必要となります。当院では高い技術力のもと、これらを可能な限り温存し、必要に応じて人工臓器による再建を行う臓器形成術・再建術を積極的に行っています。
肺がんは、病気の進行に伴い、大きさを増だけでなく隣接する重要な臓器へ直接ひろがる性質をもちます(浸潤)。同時に、肺門・縦隔などの周囲リンパ節へのひろがりをきたします(リンパ節転移)。また、さらに進行した例ではリンパや血液の流れによって他の遠隔臓器に転移をきたします。局所進行肺がんとは、「遠隔臓器には転移していないが、肺の近傍にある臓器やリンパ節に浸潤や転移をきたしている肺がん」を意味します。これまで、これら局所進行肺がんの患者さんの多くは、手術のみを行っても高い確率でがんの再発を生じるため、手術不能と診断され、化学療法や放射線療法が治療の中心となってきました。しかし、これらの局所進行肺がんの患者さんの中には、手術療法と化学療法や放射線療法を組み合わせた集学的治療をおこなうことで、長期の生存を得ることができる方がおられることが明らかになりつつあります。
岡山大学病院では、1995年頃より、手術前に化学療法または化学療法+放射線療法をおこなう、術前導入療法を、腫瘍内科・放射線科と協力しながら独自に開発して行ってきました。 具体的な方法として、まずは種々の生理検査・画像検査や、リンパ節転移を評価する縦隔鏡検査または気管支鏡下針生検(EBUS-TBNA)と呼ばれる検査により正確な病気の進み具合(病期)を決定します。これらの検査により、局所進行肺がん(遠隔転移のない進行肺がん)と判断され、手術にて切除可能と診断された患者さんに対して、まずは化学療法(当院ではドセタキセルおよびシスプラチンという2種類の抗がん剤を組み合わせて行っています)および放射線療法を行います。これらの治療後、全身状態の回復を待って手術を行います(図2)。化学療法および放射線療法を行った後の手術であるため、一般的な肺がんの手術よりも術中・術後の合併症を併発する確率は高くなります。しかし当院では、術前後の徹底した全身管理や手術方法の工夫などにより、合併症の発症率を極めて低く保つことに成功しています。結果として、進行肺がんの治療成績としては世界でも類を見ない素晴らしい成績を上げています(図3)。
また、気管・気管支や肺動脈に肺がんが及んでいる場合には、これらの重要臓器を合併切除したり、片側の肺すべてを切除する肺全摘術が必要となります。当院では、これらの臓器や正常な肺を温存する目的で、高い技術力のもと積極的に気管支形成術、肺動脈形成術(図4)や自家肺移植(自家肺移植の項目を参照)を行っております。さらに、その他の重要臓器や肺尖部(肺の尖端部)の胸壁に及んでいる肺がんに対しては、必要に応じて心臓血管外科や整形外科と共同しながら、拡大手術を行っています。
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