乳腺・内分泌グループ
バセドウ病は甲状腺機能が亢進(甲状腺ホルモンが体内で増加)するために、それによって体内の特に代謝のバランスが崩れて頻脈、体重減少、甲状腺腫大などの症状が見られる疾患です。また、加えて眼球突出といった特徴的な症状が出ることもあります。この疾患には抗甲状腺剤による内科的治療に加えて、放射線治療および手術療法があります。治療法は患者様の症状や病態に合わせて最適の方法が選択されなければならないため当院にいては、2006年に内分泌センターを開設し、内分泌外科と内分泌内科の合同による、専門スタッフが診断・治療に当たります。
甲状腺にできる腫瘍には、良性の腺腫・腺腫様過形成と悪性(いわゆる癌)があります。検査は超音波によって主に行われ、形・内部の性状などによって良・悪性を判定します。さらに腫瘍に針を刺して細胞をとり、病理検査(顕微鏡検査)を行う細胞診を行うこともあります。また、当院ではPET-CT検査も行うことができますので、腫瘍の存在診断や遠隔転移の有無の検索に利用しています。
悪性(甲状腺癌)は一部の特殊な組織のものを除いて、他の癌に比べて非常に予後の良い癌(10年生存率90%以上)ですが、現在ある抗がん剤はほとんど効果がないため治療として手術が選択されます。また、超音波上、良性と判定されても非常に大きい腫瘍や、増大傾向にある腫瘍は手術により切除されることもあります。
鎖骨の頭側1.5~2cm程度のところを皮膚のしわに沿って切開して甲状腺を摘出します。摘出する甲状腺の大きさによって、全部摘出する全摘術、少しだけ残してほとんどの甲状腺を摘出する亜全摘術、病変のある側半分の甲状腺を摘出する葉切除術および腫瘍のみを摘出する腫瘍核出術があります。
一般的な良性腫瘍の場合はなるべく正常な甲状腺を残す葉切除や核出術が行われ、バセドウ病の場合は甲状腺を3~4gだけ残す亜全摘術が行われます。甲状腺癌や非常に大きな良性腫瘍で甲状腺を残すのが難しい場合は全摘が必要となり、また甲状腺摘出に加えて頚部リンパ節の摘出(郭清)も行われます。甲状腺の裏側には、声帯の動きをコントロールしている反回神経という重要な神経がありますのでこれを傷つけないように慎重な手操作が求められます。手術にかかる入院日数は5から7日間程度です。甲状腺全摘術や亜全摘術の場合、手術後甲状腺ホルモンやカルシウム濃度が低下することがありますので、薬の投与が必要となります。