扱う病気について

●テーラーメード治療と腫瘍バンク

【テーラーメード治療】


 病気には必ず原因があります。しかしながら、同じ肺炎であっても原因となる細菌の種類は、様々ですので、原因菌にまったく効かない薬を選んでも副作用のみで肝心の肺炎は全く治らないことがあります。がんの薬による治療も同じです。近年の検討により、同じ肺がんも様々な原因(遺伝子異常など)を持っていることが完全ではありませんがわかってきました。その中で、特定の抗がん剤に効果がある遺伝子異常、または効果を示さない別の遺伝子異常などもわかってきました。このようながんの異常の特徴に解析して、抗がん剤を選択し、個人個人のがんの特徴にあった治療を行うことをテーラーメード治療といいます。

【肺がんの遺伝子異常の特徴と分子標的治療薬】


 肺がん、特に肺腺がんの遺伝子異常の解明が進んできています。EGFRという遺伝子の変異は、たばこを吸わない方、東洋人、女性に特徴的な遺伝子変異で、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(イレッサ、タルセバ)という抗がん剤はEGFR遺伝子に変異があれば約80%の確率でがんが小さくなり症状も改善することがわかってきました。またEGFR遺伝子異常のなかでもイレッサが効かない、あるいは効かなくなる変異があることも判明しております。
 EML4-ALK融合遺伝子も、肺がんに特徴的な遺伝子異常で、ALK阻害薬に約80%の確率で効果があることがわかってきました。これら異常遺伝子産物を標的とした抗がん剤を分子標的薬といい、遺伝子異常の解明が進められるとともに、さまざまな種類の分子標的薬が開発されています。長期間の分子標的薬の使用により薬の効果が少なくなる(耐性化の問題)こともわかってきており、耐性化の原因の解明や耐性化を克服する新たな薬の開発が現在世界的に活発に行われています。岡山大学呼吸器外科でも積極的に検討を続け、これまで多くの報告を行っています。また、患者様にもこのような最新の知見を還元するため、遺伝子異常により抗がん剤治療の種類・方法を決定することをおこなっています

【腫瘍バンク】

 患者さん一人一人にあった治療法を選択するためには、それぞれの患者さんの腫瘍がもつ遺伝子異常の特徴を理解する必要があります。それらの特徴を解析する様々な遺伝子異常検索を正しく行うためには、患者さんから採取した腫瘍をできるだけよい状態で保存しておくことが非常に重要です。岡山大学呼吸器外科では、患者さんの同意のもとに、手術などで採取した腫瘍は採取後すぐに病理検査などの治療に必要な検査分を十分残した上で、余った部分を腫瘍バンクとして凍結保存しています。これにより通常の保存方法では得られない質のよい腫瘍バンクを作成しており、必要時に遺伝子異常の検索を行える体制を作っております。