扱う病気について

●早期肺がんの外科治療

【はじめに】

 岡山大学病院では、早期肺がんに対して、患者様にやさしい「低侵襲手術」を行っています。低侵襲手術として、①傷を小さくすること(胸腔鏡補助下手術)、②肺切除量を小さくすること、③リンパ節の切除範囲を小さくすること、の大きく3つがあります。科学的根拠に基づき、高い技術力により肺がんの十分な治療を行いつつ、患者様への負担の低減を目的として、これら3つの低侵襲手術を積極的に取り入れています。

【①傷の縮小(胸腔鏡補助下手術, VATS)】

 胸腔鏡と呼ばれる内視鏡(カメラ)を用いた手術方法(VATS; Video Assisted Thoracic Surgery)により、従来よりも小さい傷で、従来と同様の手術成績を得ることが可能になってきました。詳しくは、胸腔鏡補助下手術(カメラを使った手術)の項目をご覧ください。

<参考:完全鏡視下手術(Complete VATS)>


 胸腔鏡補助下手術(VATS)には、体に小さく開けた創から病変を直接観察しながら手術を行う手術(Hybrid VATS)と、終始カメラで映したモニター画面を見ながら手術を行う完全鏡視下手術(Complete VATS)があります。後者の方が小さな傷で手術を行うことが可能であるため、術後の痛み軽減や美容面でメリットがあると言えますが、より特殊な技術が必要とされます。当院では高度の進行病変などを除いてほぼ全例に胸腔鏡を用いた手術を行い、創部を8cm程度に抑えたHybrid VATSは全体の約半数の症例で行っており、Complete VATSの症例数も近年増加しております。



【②肺切除量の縮小】


 ヒトの肺は、右側3葉(上・中・下葉)および左側2葉(上葉・下葉)の5つの葉に分けられます。それぞれの葉はさらに、より小さな区域に分けられます。このうち、手術によって各葉を切除するのが葉切除(例:右上葉切除など)、各区域を切除するのが区域切除(例:右上区域切除)、さらに、これらの区分けとは無関係に腫瘍を含めた肺を部分的に切除するのが部分切除です。手術で切除可能な肺がんに対する標準的外科治療としては、一般的に肺葉切除以上の術式が勧められています。また、もともとの肺機能が十分でない患者さんは、肺機能をなるべく多く残すために、肺切除量を縮小した手術が勧められています。また、近年の画像診断技術や検診技術の向上により、非常に早期の肺がんがよく発見されるようになっています。これら早期の肺がんに対して、標準術式を行うと、各肺葉(肺全体の約5分の1)を切除しなければなりません。これら早期(I期)の肺がんの患者様の中には、ある条件を満たせば、肺葉切除以下の切除(区域切除や部分切除)でも十分に根治できる可能性が報告されつつあります。したがって、当院では患者様の病気の進み具合(病期)や全身状態を慎重に検討しながら、肺切除量の縮小を行い、術後の肺機能温存に努めています。



【③リンパ節切除範囲の縮小】

肺がんの手術においては、正確な病気の進み具合(病期)を診断する観点から、肺切除と同時に系統的なリンパ節の切除(系統的リンパ節郭清)を行うことが勧められています。具体的には、1群および2群(縦隔)と呼ばれるリンパ節を系統的に切除します。しかし近年の研究において、肺がんの発生部位と転移しやすいリンパ節の場所との関係が徐々に明らかになりつつあります。特に、肺の末梢に存在する小型の早期肺がんにおいては、転移頻度の極めて低いリンパ節の切除を省略する試みがなされています(例えば、上葉にできた肺がんに対しては下縦隔と呼ばれる部位のリンパ節郭清を省略する、など)。より低侵襲の治療を行い、患者様への負担を低減する目的から、当院においてもこれらのリンパ節切除範囲の縮小に向けた試みを行っています。

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電話: 086-235-7265(岡山大学 呼吸器・乳腺内分泌外科 医局)